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情報コーナー

●長野式研究会・尚古堂便り
Vol.38 「地五会」と「天五会」

和田仁宏先生が、色々と古典からのアイデアを披露してくださいます。

先日も、胆経の足部に「地五会」という経穴がありますが、「人迎」の別名に「天五会」という経穴名があります…、というお話しをされました。
松本先生も、腎経の下腹部の経穴に「横骨」があり、「人迎」の別名がまた「横骨」とも言います…と言われました。
ですから、下腹部の「横骨」付近の圧痛は、「人迎」を治療すると改善してきます。
ただ、「人迎」は、本来胃経ですが、下腹部の「横骨」は腎経ですので、「人迎」の別名「横骨」を刺鍼するときは、「兪府」がそのまま腎経を上向していくように、「人迎」のやや上を上向きに刺鍼すると、より効果が現れやすいようです。
同様に、「天五会」付近の圧痛も、「地五会」を刺鍼すると改善していきます。
ただし、「地五会」が胆経であるためか、「人迎」より胆経寄りの上方、胸鎖乳突筋の停止部付近の圧痛所見などに効果があります。

前回の《京都・新大阪会場》の‘松本先生の著書を共に学ぶ:ダイジェスト講座’のときに、著書(『Kiiko Matsumoto‘s Clinical Strategies』:Vol.1)の内容が「腰腿点」の個所で(P393)、C1(環椎)の反応点が、胸鎖乳突筋上部の乳様突起付着部横にあり、やはり、「中渚」に近い「腰腿点」の刺鍼で改善することができる…と書かれてありました。
C1の反応点が、先の「天五会」の位置と非常によく似ています。
考えてみると、外方にある「腰腿点」の位置は、第4中手骨と第5中手骨の間にあります。
また、「地五会」は、第4中足骨と第5中手足骨の間にあり、手と足の違いはあっても、位置が非常に似ています。
すると、講座参加者の中から、以前に習っていた所の先生が、「‘耳鳴り’は「地五会」」と言われてました…との応答がありました。
「腰腿点」は、もちろん、腰痛に使用しますが、他に適応症として、‘耳鳴り’などが挙げられています。
ムムッ、耳鳴りは、「地五会」でも「天五会」でも効果があるのか…!
となると、「地五会」は腰痛にも効果があるということになる…?
そして、長野潔先生の‘耳鳴り’は「翳明」。これも乳様突起の下端であり、狙いは皆同じです。
一つのアイデアが、色々と繋がっていきます。

この話を和田先生にしたところ、以下のような古典を引用してくださいました。

『鍼灸甲乙経:巻三』に、「人迎一名天五会」とあります。
明代初期の鍼灸歌賦(経穴の効能を歌にしたもの)の『長桑君天星秘訣』に、「耳鳴腰痛、先五会、次鍼耳門三里内」と書かれています。(下線は、分かり易くするためのものです)
‘五会’ときり書かれていませんが、『類経図翼』(張介賓)では「人迎」(天五会)と地五会の両方に引用されています。

やはり、‘五会’(「地五会」か「天五会」かは分かりませんが…)は、耳鳴りと腰痛に効果があることが古典にハッキリと記載されています。

果たして、「‘耳鳴り’は「地五会」」と教えられた講座参加者の先生は、どこからか、ただ、「‘耳鳴り’は「地五会」」と学び、臨床で使用したら効果があった…、あるいは、古典から引用して臨床に効果があった…、のか分かりませんが、やはり、現在私達が使用している「〜の愁訴には、○△の経穴が効く…」というような中には、調べてみると古典に行き当たるのかと思います。
そして、『長桑君天星秘訣』の「耳鳴腰痛、先五会、次鍼耳門三里内」が、明らかに、現代の鍼灸治療に脈々と継承されていることが分かります。
更に、この歌賦は治療の順序が大事(「此法専分前後施」)と言われていますので、必ず、先に‘五会’(「地五会」 and/or 「天五会」)を処置して後、「耳門」…と続くのかと思います。

この後に、和田先生は、三里は虚里=宗気…、と話しを展開させ、松本先生の‘骨枯れ’、そして、‘五会’と‘腎’との関係に話を展開させていきます。
(この詳しい内容は、‘古典補遺講座’や他の講座で、お話しされます。これから‘宗気’について、核心部に入っていかれるのではと思います。松本先生と、また、一味違った‘宗気考’が聞かれるのではと楽しみです)

和田先生によって、古典が身近になり、和田先生の「こんなのにも効果があるのでは…?」という一言に触発され、色々と参加者が試行錯誤を始めています。
松本先生の著書に書かれてあった‘雷の経穴’「豊隆」・「列缺」を、若き鍼灸師が面白い症例で使用され、近く専門誌に投稿予定です。
是非、ご一読下さい。
また、講座には、鍼灸学校の教員の方も参加されていて、東洋医学概論を教えているとのことです。
このように古典の話しをすれば、若き鍼灸師がこれからどんどん古典の魅力に取り憑かれていくのでは…、と、思っています。
将来が楽しみです。

和田仁宏先生の講座から話される治療法は、松本先生を彷彿させるものであり、和田先生が今まで一人で臨床で試されていた治療を、多くの人に試していただき、その効果を確かめたい…と、どんどん披露されています。
長野潔先生や松本岐子先生のような一人の天才性に頼っていた新しい治療法を、和田仁宏先生は、100人に臨床で試して貰えば、100の症例が集まり、「三人寄れば文殊の知恵」の如く、多くの人の‘集合知’で長野先生や松本先生に少しでも近づけるのでは…、と考え、惜しげもなく興味ある治療法をお話し下さいます。
中には、松本先生のセミナーに匹敵するような、効果が著しく、また、使用し易い治療法が披露され、参加者全員で試しています。
近いうちに、症例報告として発表したいと考えています。

このように、参加者皆さんが意見を自由に述べ合い、それを、明日からの臨床に使用し、その結果をまた持ち寄って検討し合う…、こんな講座をしたいと思っていました。
和田先生が与えられ、和田先生を中心に、少しずつ夢が叶っていきそうです。


村上 裕彦 2011年09月




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