HOME に戻る
長野式研究会







・My Family
 K子母さんのお台所
 マメちゃんの小部屋
 ├ vol.2
 └ vol.1
 若大将の四駆
 └ vol.1
 故郷の芳子さん
 ハツラツママさんの自然農園

・セミナー情報

title_tomin.gif

マメちゃんの小部屋
Vol.1 症例報告 1:首も回らないほど背中が痛い  症例報告 2:右肩痛

以下は、まだ、マメちゃんも始めて間もない頃の症例ですので、遠回りをしていることもありますが、最近は、ステップアップして面白い症例を話してくれます。それらは、もう少し後のお楽しみとして、今回の症例報告を読まれ、あれこれ考え、「なるほど!、フーン…」などと楽しんで下さい。


<症例報告 1> 37歳(S40.11月生まれ)、男性、日本料理屋の料理長

【主訴】 背中全体(首から腰まで)がこわばって痛い(2〜3年前からずっと)。疲れがとれない。だるくて体が重い。食欲無く、体がムクむ。
【既往歴】 7年前狭心症発作(以来、疲労時に胸痛あり)
【家族歴】

父:心筋梗塞で死亡(父系・心臓病が多い)
母:糖尿病が原因で死亡(母系・糖尿病が多い)

【生活習慣】 タバコ約15本/日、酒は飲まない
【所見】 腹部オ血、ネーブルクロック8時(++)、膵炎様の腹顕著、「肩井」にグリグリ、両C3にグリグリ、背部は特にT7〜11がひどく張っている。
【治療】

腹部オ血処置、「胃の気」、副腎処置(SU尺)、「陰陵泉」+「上太白」、椎骨動脈血流促進処置(「曲泉」「陰谷」「上四涜」)、C3グリグリに「右太敦」&「左陰白」に多壮灸(グリグリが無くなるまで、かなりやった)

・お腹が見事に緩み、体が楽になったというので伏臥位に。「膏肓」を押圧するとエビ反るほど痛む。両親からの遺伝体質の影響が大きいようなので、「大椎」、「天ユウ」、T11・12に横V字刺鍼、その後、「膏肓」に(+25壮施灸)…押していたくなくなるまで施灸。どこを押してもかたくて痛かった背中がT5付近以外、全部緩み、どこも痛くない。
T5に横V字、「大腸兪」に灸頭鍼をして終了。

・施術後、「嘘みたいに体が軽い」「首と腕がまわる!」と感激していた。実は首も回らないほど背中が痛かったようだし、腕も回せなかったらしい。腕をブンブンふりまわして喜んでました。(首はC3のグリグリとったせいか?)※これからしばらく続けたいといっています。が、この同様の治療でそんなに長くかからないのでは、と思っています。今日は以上です。


【補足:村上】
この症例は、「キー子スタイル」の基本を、忠実に行っている見本のようなものです。
診られる所見に対して、教科書通りに対処しています。

オ血処置、扁桃処置はもちろんですが、糖代謝不全の所見が腹部と背部に顕著に発現していて、その治療を仰臥位・伏臥位ともに加え、遺伝的素因の「膏肓」を丁寧に施灸した事が奏功したのかと思われます。
主訴の一部である後頚部に対しての椎骨動脈血流促進処置は、標治法とも本治法ともなる処置ですが、T5に圧痛が残ったのは、心臓あるいは頚部に異常があったのかと考えられます。あるいは、両方の弱点を持っていたから、圧痛が残ったのかも知れません。(T5は心臓・頚部の反応点。ただし、心臓は左側)いずれにしても、体の反応がストレートに出ているからこそ、治療の効果が顕著だったのかも知れません。
「大腸兪」は、恐らく圧痛が残っていたのではと想像しますが、「大腸兪」も扁桃の反応点です。
父が心筋梗塞で、本人も狭心症。母の糖尿病に対して、本人は糖代謝の反応著明。遺伝的素因=「膏肓」の使用が奏功するパターンです。「陰陵泉」は、膵炎様の腹にも「肩井」の圧痛にも使用します。このように、一つでいくつもの愁訴に対応する経穴は、患者さんが要求している経穴になることが多いです。一石二鳥・三鳥…にもなる経穴を探すのも、治療のポイントの一つです。
また、治療師「マメちゃん」は、ピラニアの如く食らいついたら愁訴が改善するまでジックリと腰をすえて取り組みます。(私も治療を受けていますが、鍼の痛み(…ヒビキ?…)を訴えても何のその。圧痛が減少するまでひたすら‘気’を入れて雀啄を続けます)この姿勢は、是非とも学びたいものです。(ヒビキは少し押さえて頂きたいのですが…)質問に対して、「この処置をしたの?」と聞くと、「治療したけど、治らなかった…」と答える方が多いですが、この「マメちゃん」のようにジックリやったの?と質問者に聞き返したい事があります。
長野潔先生も、‘この経穴で決めるぞ!’と思われると、本当に丁寧に時間をかけて雀啄をしたり、刺鍼・雀啄をしてから検脉、検脉をしてはまた雀啄、また検脉をしては雀啄と、愁訴が改善するまで取り組まれている事が、非常によくありました。


<症例報告 2> 80歳(T11.8月生まれ)、女性

【主訴】 右肩痛:折れるかのように痛む。可動時、安静時ともに痛む。夜は痛みでほとんど眠れない。挙上時の痛みが主。半年前より発症(本当に辛そうで気の毒)。右膝痛、腰痛。
【随伴症状】 便秘、高血圧、不整脈。
【既往歴】 卵巣嚢腫(38〜39才頃)手術(臍から恥骨付近まで任脉上に手術痕)
【所見】 腹部オ血、4・8時、「中カン」、「翳風」に圧痛。翳風の圧痛(++)、右耳から頭にかけてガンガンするという。
【治療】

勤務している病院の患者さんで、私の前に3回治療を試みていたが、痛み変わらず。私が担当したのは4回目。
まず、腹部オ血処置、「胃の気」(+3壮ずつ施灸)、八難処置、「陰陵泉」に置鍼する。
右耳の症状が気になったので、「右漏谷」を加える。便秘が苦しいということで、「左血海」を加え、頭部オ血処置。(五十肩の時には使うし、下腹のオペ痕もある。80才とはいえ症状的には五十肩)
「労宮」の圧痛(+)なので、「曲沢」「間使」。ここで右側臥位になってもらい、下垂処置、側彎処置。「右天宗」付近を何点か押圧すると、すごーく痛がるので、痛みを聞きつつ4点取穴し置鍼(+7壮ずつ施灸)。これで痛みはほぼなくなった。何度も腕を上げ下げしたが、痛くない!(以前「左天宗」で不整脈を出してしまったので、あえて右で取ったのですが、効果あったようです)
最後に伏臥位で、イ・ヒ・コン、「大椎」「天ユウ」、L1〜4の横V字、「次リョウ」、「手三里」に置鍼。「復溜」+「大杼」で『骨のギシギシした感じがとれた』ので治療終了。
変わらなかった症状が一気にとれてしまったので、少し自信を持った治療でした。


【補足:村上】
「漏谷」「上四涜」は中耳炎の処置法です。「上四涜」は八難処置でも使用していますから、これも一石二鳥の経穴であり、この患者さんが必要としている経穴であり処置法なのではと思われます。
中耳炎を頻回起こした既往歴のある患者さんで、「翳風」〜「肩井」にかけての頚肩の凝りには、この中耳炎の処置で肩凝りが改善する事がよくあります。頭部オ血処置は、血圧調整処置と同じです。「腹と逆さ顔」の関係で、下腹部の傷や下腹部に圧痛が多いときには、良く使用できます。所見には書かれていませんが、恐らく「百会」に何らかの所見があったのではと思われます。
八難処置は、鼠径部と頚部あるいは下腹部の所見が診られる時に使用されます。鼠径部の所見が書かれていませんが、これも古い下腹部の手術歴があるので、恐らく所見を取ればあったのかと思われます(あるいは、取られたが、書き漏れたのかも知れません)。
長野潔先生は、五十肩の痛みを頭部オ血で改善されたことがあります。左側の「陰陵泉」「血海」は、便秘の処置としても使用されます。
長野潔先生は、「左天宗」は「心実」で使用されると言われましたが、不整脈を出したときは、恐く「心虚」だったのではないかと思われます。
(長野式治療法には、「心虚」も「腎実」もあります)




Copyright(C) wkey 長野式研究会 All rights reserved.