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長野式研究会

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ご挨拶

●長野式治療法

特 徴 | 長野式治療法と松本岐子先生 | 故長野潔先生 | 松本岐子先生


《特 徴》

※以下は、村上からみたものです。 各項目の詳細は、折に触れて他のページで書き加えていきたいと思います。 『医道の日本』社刊行のビデオや各セミナーのビデオをご覧になりますと、その特徴がより理解頂けると思います。

(1) 東西両医学の融合
長野先生は、人間の身体は東洋も西洋もないと言われ、お若い頃から東洋医学と西洋医学の融合を試みてこられました。『鍼灸臨床わが三十年の軌跡』の始めの、松本岐子さんが書かれた「我が師匠」の中に
◎古典を学んだ人
◎西洋医学の知識があり、東西医学の両側より患者を診断できる人
…古典をもっと理論的に、科学的に理解できないものか…と書いてあるように、まさにそれが体系化されたのが『長野式治療法』です。
長野潔先生の2冊の著書には、随所に東西両医学の融合について書かれていますので、是非、ご一読下さい。

(2) 経絡・経穴、あるいは脉診に西洋医学的意義の付加
特徴の(1)にあるように、東西両医学の橋渡しをするために、東洋医学での各経穴や経絡が、西洋医学ではどこにどの様に関係があるのかを臨床で調べ、それらに西洋医学的な意義を与えられました。
例えば、「洪脉」は心臓病やリウマチに、「右関門」はオッディ筋に、あるいは、「脾経」はリンパに関係があるなどです。また、「照海」「兪府」は副腎処置と言われ、副腎の治療が必要ならば、この処置を行えばよいということになります。
このように、経穴や経絡などに西洋医学的な考え方を取り入れたことが、長野式治療法が受け入れ易い理由の一つなのではと思われます。今では、それを松本岐子さんが更に発展させ、古典や西洋医学だけではなく、様々な分野を統合して、新たな理論を展開しています。

(3) 脉診…特に脉状診と長野潔先生独自の脉診
長野式治療法の大きな特徴の一つが‘脉診’です。
先生は、もちろん‘脉差診’もされましたが、「‘脉状診’は、過去の病歴を語り、現在の患者の状態を示し、治療効果を判断し、予後が推定できるものである」、「‘脉状診’が変化しないと、症状が変化しない」と言われ、‘脉状診’の重要さを説かれました。
『鍼灸臨床新治療法の探究』のT自序Uに「…脉診に明け脉診に暮れて会得した…」、あるいは、「脉診に全神経を集中させたために、3年間で10kg痩せた」程に修練され、例えば、婦人科では生理や妊娠のみならず、流産や中絶までも脉診で分かるほどの名人芸でした。
また、TあとがきUにあるように、先生は視力障害があり、診断の手段が大幅に制限され、脉診に頼らざるを得ないことが、更に先生の脉診を進化させることになったのではと推察されます。

(4) バックグラウンド
松本先生のセミナーで治療を見ていると、「ところで主訴は何だっけ?」と言われることが度々あります。
患者さんの訴えている症状よりも、その症状を発現させている本当の原因(バックグラウンド)を治療することに主眼があります。『医道の日本』社刊のビデオのなかでも、五十肩様の痛みが、甘い物の取りすぎが原因であり、肩周囲の治療よりも、糖代謝異常(これがバックグラウンド)の治療により改善に向かう症例があります。バックグラウンドを治療すると、主訴ばかりでなく、それが原因の様々な随伴症状が改善していきます。
長野式治療法を取り入れて治療をされている鍼灸師の方々が、「長野式治療法を学んだお陰で、治る治らないは別として、どんな患者さんがきても驚かなくなった」と異口同音に言われます。これも、主訴に関係なく、まず所見をとり、そのバックグラウンドを推測し、治療すれば、それが肩痛や腰痛、背部痛であっても処置は同じになります。いわゆる本治法になりますが、そのバックグラウンドが、糖代謝異常、下垂など長野式治療法独特の捉え方となっています。

(5) 多様な処置法
長野式治療法では、胃の気処置・下垂処置・副腎処置・オ血処置・消炎処置・血糖調整処置……などと、数十にも余る様々な処置法があります。(7)で説明しているように、バックグラウンドの治療の基になる基本的処置や、甲状腺やリウマチなど様々な特定の疾患に対する処置法などが用意されています。脉診や腹診など、それぞれの所見に対して、あるいは、ある疾患に対しての所見にあう処置法を探し、治療していきます。
長野式治療法を取り入れようとされる方は、まず、これらの処置法を一つずつ臨床に使用されて効果を確認されるとよいと思います。

(6) セット鍼
治療の効果をより良いものとするために、長野式治療法で使用される処置法は、いくつかの経穴を組み合わせて治療する‘セット鍼’となっています。
例えば、「腹部オ血処置」では、オ血のための「中封」と、扁桃のための「尺沢」をセットにして使用します。オ血が溜まると扁桃の弱体化を招くために、オ血の排泄には扁桃を強化すると、「腹部オ血処置」がより効果を現すことになります。

(7) 「基本的処置法」と「特別疾患に対しての処置法」の組み合わせ
長野式治療法では、本治法たる「基本的処置法」と、標治法たる「特別疾患に対しての処置」を組み合わせて治療することが多くあります。
特徴の(4)にあるように、バックグラウンドを「基本的処置法」で治療し、その後、主訴や随伴症状、病名などに対しての「特別疾患に対しての処置」をします。例えば、‘扁桃’、‘オ血’、‘副腎’など、必要に応じて「基本的処置」をして、その後、膀胱炎、胆嚢炎、緑内障などの特別な疾患に対して配穴された処置法を加えて治療をします。もちろん、「基本的処置法」だけで改善していくこともあります。

(8) 臨床に取り入れ易い処置法
処置法の中には、初めての人にも、明日からの臨床にすぐ使えるばかりでなく、学んだ事をすぐに他の人に教えても、教えられた人がまたすぐに実地臨床に使えるという再現性に富んだものが多くあります。
当方の‘基礎講座’を終了された方でも、すぐに、ご自身で長野式の研究会を主宰したり、他の研究会の講師として講義をするなど、非常に取り組み易い所があり、また、他の治療法をされている方でも、一部に長野式処置法を取り入れることができる導入のし易さがあります。
これが、長野式治療法が急速に広がった理由の一つと思われます。
しかし、一方、上記のように、長野潔先生の脉診は神業であり、名人とも称されるように奥が非常に深く、鍼の治療技術も職人芸であり、また、「キー子スタイル」と呼ばれる松本岐子先生の治療法も、バックグラウンドを見極める非常に高度な考えが要求され、古典の解釈も次々に進化して、学べば学ぶほど難しく興味の尽きない治療法です。

(9) 処置後の効果の速やかなる確認
長野潔先生にしても、松本岐子先生にしても、一つの処置を行う毎に、その処置法のターゲットとしている所見や愁訴が改善、消失しているか、効果を必ず確認します。それにより、患者さんも治療の効果を実感することができ、患者さん主体の治療となります。


長野式治療法と松本岐子先生

前述のように、長野潔先生の脉診と鍼の技術は、名人・天才と称されるほどのものであり、習得することは非常に困難が伴い、また、他に類を見ない治療法であったために、長い間、先生は誰にも理解されず、「孤高の人」として、ただ一人黙々と臨床を続けてきました。
しかし、その治療法の迫力を実感した松本岐子先生は、その難解な脉診をどうにか他の診断法に変え、長野先生の治療を自らの臨床に取り入れられないかと考えました。松本岐子先生は、A4版で500ページ近い『Hara Diagnosis … Reflections on the sea』という、古今東西の腹診に関しての著作がある程の腹診のオーソリティであり、長野先生の脉診を腹診に代えて、長野式治療法を我々にも習得し易い形に翻訳して下さいました。
長野式治療法がここまで広く人々に知れ渡ったのは、松本先生が脉診ではなく腹診の大家であったこと、と多くの方々が言われています。
長野式治療法の真髄は、やはり脉診です。
「脉診三十年」と言われますが、名人・長野先生でさえも、脉・脉・脉…と、それこそ血の滲むような努力をされました。たった、三本の指先で非常に多くの情報を得るのですから、簡単に習得されるものでは決してありませんが、強い目的意識をもち、精神を集中し、努力を続ければ、ある日突然指先に感じることができると長野潔先生は言われました。是非、長野式脉診を志す方は、「脉診に明け、脉診に暮れて」、体重を減らす程に習得して頂きたいと願っています。

故 長野潔先生

古典への深い造詣と、ご自身が病院勤務で得られた西洋医学現場での体験、それに、豊富な鍼灸の臨床経験を基に、『長野式治療法』という東西両医学を融合させた新たな治療法を体系化されました。
『鍼灸臨床わが三十年の軌跡』にも書かれているように、東京・大阪などの中心地から遠い大分の地で、共に学ぶ者もなく、研究会などの機会も少なく、衰えていく視力の恐怖のなか、飽くなき探究心で独自の鍼灸を開拓しました。
松本岐子先生は、『医道の日本』誌臨時増刊・No.8、あるいは、ご自身の著書の始めで、「長野先生は視力障害のために兵役を逃れ、特攻隊で出撃する級友を一人で見送ったそうです。そして、自分一人が生き残り、その英霊が、俺たちの分まで生きて、残された人々のために働いてくれとの願いが、先生を天から支えていたとしか思えない」と述べています。
先生は、『鍼灸臨床わが三十年の軌跡』・『鍼灸臨床新治療法の探究』の2冊の著書を、鍼灸を学ぶ人々に残された後、全てをやり終えたかのように、大病され、天に召されました。このホームページは、長野潔先生の紹介のためのものです。
これから、長野先生から得た素晴らしい贈り物を、できる限り皆様にお裾分けをしていきたいと思います。
※長野潔先生の略歴は、著書を参照して下さい。
※以後、‘長野先生’・‘先生’とありましたら、全て‘長野潔先生’を表します。

松本岐子先生

危うく地方の名人芸として、人知れず埋もれてしまいそうだった長野潔先生の治療法を発見され、その多くの教えを受け継ぎ、長野式治療法を世界に広め、「長野式と言えば松本岐子先生」と言われる、長野潔先生の愛弟子です。
昭和40年代頃から、先生は『医道の日本』誌に幾度となく投稿していたにも拘わらず、前述のように、長野潔先生を理解された方はほとんど無く、「長野潔先生という名馬」を発見できたのは、「松本岐子さんという名伯楽」がいたからこそです。まさに、「天才のみ天才を知る」ことができると思います。
世界屈指のハーバード大学医学部から招聘され、現在、付属のベス・イスラエル病院で、ハーバード大学医学部の医師や学生に長野式治療法を中心とした東洋医学を、夫のディビット・ユーラー氏と共に教えられています。また、博士課程の鍼灸専門学校やイスラエルの大学医学部でも招聘依頼を受け、アメリカの多くの州、カナダ、イギリス、オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリア、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、日本で、教鞭を執られたり、セミナーを精力的に行い、「キー子スタイル」として世界的に有名です。(セミナーのいくつかは、医師に対してであり、彼女のセミナーのほとんどに、鍼灸師ばかりでなく、多くの医師や他の医療関係者が参加されています)
後ろ盾になる組織もなく、「博士」などの肩書きも持たず、自らアピールすることもなくここまで至ったことが、彼女の鍼灸の実力の凄さを如実に示していると思います。古典の造詣も非常に深く、『医道の日本』誌に単なる古典ではなく、解剖学、発生学など様々な分野を縦横無尽に駆使し、独自の古典の世界を展開しています。
2002年には『医道の日本』社より‘間中賞’を受賞しましたが、彼女は間中喜雄先生の弟子でもあり、恩師に何よりもの恩返しをしました。長野式治療法を中心とした、「キー子スタイル」の総決算とも言うべき著書『Kiiko Matsumoto's Clinical Strategies … In The Spirit Of Master Nagano:Vol.1』がようやく完成し、長野式治療法を学ぶ方々には素晴らしい贈り物となりました。現在も精力的に、長野式を中心に鍼灸の素晴らしさを世界に広め、古典の奥義を極めんとしています。そして、いつも日本の若者に、「鍼灸って素晴らしい!、古典って凄い!」と檄を飛ばしています。是非、若者諸君(若者とは、生物年齢ではない。鍼灸に対しての情熱と迫力を持っている人です!)、松本先生の激励に応えて、鍼灸を世界に広め、多くの病める人々を救って欲しいと切望します。
※日本でのセミナーに関しては『セミナー情報』を参照下さい。
※松本岐子先生に関しては、その場に応じて‘松本先生’・‘岐子先生’・‘岐子さん’等と書くことがあります。

村上裕彦

1949年…2月9日生まれ。
1966年…小中学生に対しての学習塾を始める。
1980年…日本鍼灸理療専門学校(花田学園)本科卒。鍼灸指圧治療院 尚古堂 を開業。
1993年…松本氏より長野潔先生を紹介され、先生の2冊の著書『鍼灸臨床わが三十年の軌跡』『鍼灸臨床新治療法の探究』を校正。
1994年…長野式研究会を主宰、現在に至る。
◇鍼灸の実力は全くお恥ずかしいものですが、長野潔先生と松本岐子さんの鍼灸治療を見聞きし、見よう見まねで実際に体験して、鍼灸の素晴らしさを感ずることにおいては、負けないつもりです。




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