最初に、脉診により、「洪・数」のための本治法を行い、次に、主訴である膝痛と頻尿の治療を行っている。しかし、膝などの患部に直接刺鍼するのではなく、長野式治療法の特徴(4)でも述べたように、その原因となっているバックグラウンドを改善している。
長野先生は、膝の屈曲痛は、腰仙関節の硬化により、同側の膝関節が曲げ難くなると言われる。そのために、今回もL5脇両側に刺鍼し、更に「屈伸」(脊柱起立筋緊張緩和処置)によりL5脇の緊張を緩めている。「大腸兪」と「上仙」を結んだ‘大上三角’を緩めるのに、「屈伸」は多用される処置である。また、この‘大上三角’が堅いと、症状が取れ難いと言われる。完全主義者は、脊柱起立筋が緊張し易く、ここを緩めると、迷走神経・副交感神経を活発化させるとも言われた。
膝痛、及び頻尿は、共に下垂と非常に関係があるので、「帯脉」(「前帯脉」)を治療している。まさに一石二鳥の処置である。また、頻尿のためにも、「次リョウ」と「経渠」を治療している。このように、脉診から本治法を行い、それで様々な愁訴が改善することもあるが、残った愁訴や病気の原因に対して、バックグラウンドから治療するというパターンがよくある。 |