HOME に戻る
長野式研究会







・My Family
 K子母さんのお台所
 マメちゃんの小部屋
 ├ vol.2
 └ vol.1
 若大将の四駆
 └ vol.1
 故郷の芳子さん
 ハツラツママさんの自然農園

・セミナー情報

title_tomin.gif

マメちゃんの小部屋
Vol.2 鍼灸で超安産

昨年、マメちゃんの妹さんが出産されました。
『My Family』の‘K子母さん’は、患者さんのほとんどが妊婦さんという、産科を中心とした鍼灸治療を行います。
マメちゃんは、妹の出産に立ち会い、K子母さんのアドバイスを受けながら鍼灸治療をし、その治療で、妹の初産を超安産に導きました。マメちゃんにとっても初めての経験で、出産の感激と鍼灸治療の素晴らしさを送ってくれました。その報告を、そのままに掲載します。

<妹の超安産記>

10月26日火曜日、妹があまりの腹痛のため助産院へ到着したのが朝8時半。私が助産院に赴いたのが10時半。
前日に軽い陣痛らしき腹痛があったので助産院に行った所、「まだまだ産まれない」「これは陣痛じゃない」と言われ、一体どういうのが陣痛なのか、どのくらい痛かったら助産院へ行っていいのか、初めての出産で不安になるばかりの妹。たぶんその不安を引きずったまま本格的な陣痛を迎えたのだろう。
まだ子宮口は2cmしか開いてないということだが、痛さに呻く声はもう出産最終段階といったところで、助産院の院長先生も困り果てていた。「一度、家に帰ってもらってもいい段階」と先生は言うが、妹は泣き喚くばかり。赤ちゃんの心音を聞くと、母親の動揺さながらに赤ちゃんも異常な早さの心音だった。

とにかくできる処置をしようと思い、まず子宮口を開かせるため仙骨上に長生灸タイプの温灸を6個乗せ、「上太白」に鍼と点灸7壮、「百会」に刺鍼。そして妊産婦専門に鍼灸をしている‘K子母さん'にヘルプの電話。
K子母さんは電話口で妹の声を聞き、「子宮口が何cm開いているか?(私の答え:2cm)、痛みが出てから何時間たっているか?(私の答え:朝の4時から)」と質問した後、「それでその痛がり方はおかしい。これは冷えと不安だ。」との即答。確かに、妹は前日薄いシャツのような寝巻き一枚でひらひら歩いていたし、明け方は寒さで震えていたが、腹痛のため、上掛けを取って掛けることもできなかったと言っていた。
「遠赤や電気毛布でとにかく暖めて。それから腰に温灸を50個くらい一度にやって。部屋にいる人は半袖でも暑い位に、本人は汗びっしょりになる位に室温を上げること。身体が温まってくれば落ち着くので、吐く息を長くして呼吸を整える。落ち着かせるために「足指間穴」に鍼を、単刺でもいいから入れて。子宮口が開いてくると痛みが下腹から腰に移ってくるから、そうしたら「陰包」に温灸を4〜5個。「陰包」は押してお腹に響くところね。それから「膏肓」ね。」
研修に来ていた看護学生に協力してもらって、早速、部屋と本人を温め、腰(といってもほぼお尻っぺた)に、恐ろしいほど煙をもうもうとさせながら温灸をしていると、ここで院長先生が、もう一度子宮口を見てみましょうと言って入って来られた。何と、ここまでの処置で子宮口は4cmに開いていた。

その時、K子母さんからお電話を頂いた。「さっき言い忘れたけど、ウーンって喉の奥を締めたように唸ると子宮口がムクむから、ため息のようにハーッと声を出してね。それから、お尻を温灸で温めたらあとはホッカイロでも貼って、「三陰交」に点灸を100壮以上してね。とにかく「三陰交」の点灸と「陰包」と腰(お尻)の温灸。それが終わって落ち着いたら、階段を昇り降りさせて。そうしないと赤ちゃん降りないからね。それからチョコ、バナナ、桃缶のシロップなどを口に入れること。血糖値が下がると陣痛が引いちゃうから。ゼリー状の飲料(エネルギーチャージのタイプ)でも良い。血糖値を上げることが子宮の収縮を助けるからね。あと「腰兪」も使うといいよ」。

横向きにしかなれない妹のお尻半分を温め、「足指間穴」に置鍼し、無理やりにゼリー状飲料を飲ませながら、片脚の「三陰交」に105壮の点灸をしていると、妹が「赤ちゃんが産まれそう」と言った。
誰もが、そんなはずないとよく聞きもせず、反対側を向かせてまたお尻半分を温め、もう一本の脚の「三陰交」に点灸を60壮。お腹に響く「陰包」を見つけたかったけれど、どこを押してもお腹に響くと妹が言うので、「陰包」はあきらめた。
その時、院長先生が入ってきた。「だいぶ落ち着いたようね。お産は夜か明日になると思うけど、赤ちゃんの心音を聞いてみましょうか。診察はお昼ご飯を食べてからにしましょう」。そう言って心音を聞く器械をお腹に当てると、「あら、随分心音が下のほうに聞こえるわね」と。何気なく寝巻きの裾をあけてみてびっくり!「あら、赤ちゃんの頭が出てるわ!」

バタバタと出産体制に入り、急いで妹の夫を呼び、二人で背中に手を入れて片側づつ「膏肓」を指圧。
この助産院では会陰切開をせず、また会陰が裂けないように出産を進めるので、頭が見えてからゆっくりと丁寧にいきませる。5〜6回もいきんだろうか。スルリ、ヌルリといった感じにあっさりと赤ちゃんが産まれた。
出血はほとんどなかった。後産で引っ張り出した胎盤もズッシリと立派な大きさで、無事出産が終わった。お昼の12時半頃だった。
結局、院長先生もびっくりの超スピード安産。

K子母さんに、今産まれましたと電話すると、「随分早かったね」と。本当に早かった。鍼灸治療を始めて約2時間。
明け方から苦しんでいた妹は、きっとそうは思わないだろうが、助産院に着いてから4時間ほどで産まれてしまったのだから、やっぱり誰もが早かったと言うはず。
的確な状況判断と指示を出して下さったK子母さんに、ひたすら感謝しています。
それから、もし身体の冷えがなかったら、まだもう少し楽にお産が出来たはず。妊娠中の冷えには要注意!

【補足:村上】
電話の声を聞いただけで(マメちゃんが電話をしている時に、妹さんの声が聞こえて)、「原因は冷えと不安よ」と即座に判断するベテランの凄さ!
不妊症・産科は、先ず鍼灸をTryすべしと思います。
帝王切開は、後々、Birth Trauma(出産時の外傷)として、母子共に影響のあることがあります。松本先生も、その著書のなかで、正常分娩における臍の緒の切断のタイミングまで言及しています。
また、狭い産道を通り出産することにより、胸部と肺を圧迫し、肺に溜まっていた体液と分泌物を気管支を通って口から吐き出されるそうです。ですから、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、呼吸窮迫を伴う重い肺障害を起こす危険がつきまとうそうです。

自然の営みは、我々人間の思いもよらない深い摂理に従っているのではと思います。
この院長先生のように、会陰切開をしないお産が大切です。会陰切開も、なかなか痛みが取れなかったり、(東洋医学的に)後で様々な障害を起こすことがあります。(出難かったら切ればいい…。出難かったら、出易いように導いていく…。どちらが素晴らしいと思います?)
冷えがあると逆子や帝王切開の原因になると、K子母さんが言われました。そのうち、『My Family』の‘K子母さんのおだいどこ’で、産科について存分に語っていただきたいと思います。妊婦さんに甘い物は禁物です。でも、出産時には血糖を上げておかなければならないとは、面白いですね。
妊娠中に甘い物を控えていた事に対しての、神様からのご褒美かしら?(…冗談です)

K子母さんやマメちゃんは、長野式治療法を学び、ご自身の治療の中心を成しています。この治療では、当然、長野式治療法やキー子スタイルの経穴を多用しています。
「上太白」は、筋肉全般に効果があります。以前、私の講座に参加されていたK子母さんが、講座終了後、私に質問されました。「先生、子宮口が開く経穴はどこですか?」。長野先生に子宮口を開く経穴など聞いたことはないし、私も、子宮口の開かない患者さんを診たことはないので、「今度、岐子先生から電話があったら聞いておくから」と答えました。「そんな暇はないの。今晩、生まれるのだから」。「子宮口は筋肉だから、筋肉に関係のある「上太白」はどうかナー」、と無い知恵を絞りました。後程、K子母さんから、「上太白」が子宮口を緩める効果があったとの連絡がありました。

「足指間穴」は、精神的な問題に使用する長野式治療法では有名な経穴。「膏肓」は、岐子先生が古典より解き明かした妊娠1ヶ月や出産に非常に効果のある経穴です。まさに、出産時には必須の経穴と言えるのではないでしょうか。
K子母さんは、妊娠1ヶ月や出産に効果があるのなら、最初から最後まで「膏肓」を治療したら良いのでは…と、妊婦さんには必ずと言っていいほど使用するそうです。「百会」は、精神を落ち着かせることと、岐子先生の『腹と逆さ顔』の関係でも、頭は下腹と非常に関係があります。K子母さんとは使用目的が異なるかも知れませんが、「陰包」は、長野先生は不妊に使用されていました。まさに‘陰=女性・子宮’を‘包’んでいる経穴です。

マメちゃんは、今では、K子母さんの指導のもとに、産科の腕も大分上がってきました。近くの助産院から呼ばれることも多くなりました。出産に鍼灸の恩恵を受ける妊婦さんが徐々に増えていくのは、大変嬉しいです。
長野式治療法を、この様に使用している事を耳にされれば、さぞかし天国の長野先生も驚き喜んで下さっていると思います。
皆さんも、長野式治療法の処置法や経穴の意外な使用法や効果がありましたら、ご報告下さい。お待ちしています。




Copyright(C) wkey 長野式研究会 All rights reserved.