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●時々日記 |
vol.6 時々日記 … (6) |
朝、起床して、9時の治療が始まる前は、治療室の準備をした後、朝食を取ったり朝刊を見たりしながら、「とくダネ!」(フジテレビ:小倉智昭氏がメインの司会者)や、時には、テレビ朝日などにチャンネルを回したりしてニュースを見ています。
先日、「とくダネ!」のなかで、「自分で治す腰痛新常識」というコーナーがありました。 「マッケンジー法」という、腰痛のための訓練法のような体操(と言って良いのか分かりませんが…)を紹介していました。 この「マッケンジー法」という方法自体は大変素晴らしく、腰痛で悩んでいる患者さんには朗報なのですが、この患者さんが、「マッケンジー法」に出会う前に、整形外科から鍼灸まで非常に多くの治療を受けたとのナレーションがありました。 そのナレーションの中で、「鍼灸治療は、6ヶ月90回治療を受けても良くならなかった…」とのコメントがありましたが、「整形外科で〜ヶ月○△回の治療を受けても良くならなかった…」とのコメントはありませんでした。 なぜ、わざわざ、「鍼灸治療は、…」と言わなければならなかったのでしょうか。 鍼灸治療だけ、治らなかった…と、強調しなければならなかったのでしょう。
私も、怒っています…‘むす美’
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最近、家庭の医学の様な番組や、こんな症状は危険…、というような番組が流行っていますが、鍼灸治療だったら、恐らく、治るか緩解するだろうと思うようなことが多々あります。 しかし、治療をマスコミで取り上げる番組では、鍼灸は、ほとんどというより全く対象になりません。 今回のようなときには、その対照群として、真っ先に負のイメージで取り上げられます。 医師も、患者が「今、鍼灸治療を受けています」と伝えると、「そんな治療は効きませんからお止めなさい」、「鍼灸治療は、してはいけません」などと言われることが多々あります。 ですから、患者さんも、改善しても医師には「鍼灸のお陰で良くなりました」などとは一切言いません。 これも、鍼灸治療がなかなか認められない理由の一つと思います。 良い結果を出していながら無視される歯がゆさを、多くの鍼灸師が経験しています。 アメリカでは、鍼灸治療で治ったときには、「先生の治療では治りませんでしたが、鍼灸治療をしたら、こんなに良くなりました」と、わざわざ言いに行く患者さんもいるそうです。
故長野潔先生が、常々、「鍼灸の地位向上」を言われていましたが、何十年経っても余り変わっていないのではと思います。 鍼灸師の人数は増えても、鍼灸が表舞台にはほとんど表れてきません。 長野先生の著書では、様々な病気を治療し、治している症例が満載されていますが、それらが一般に広く伝わることもなく、先生も切歯扼腕されたことも度々かと思います。 (切歯扼腕しているのは私で、穏やかな先生は、切歯扼腕なぞせず、ただ、淡々と治療されていたのかも知れませんが…) 先日の松本先生のセミナーでは、斜視をその場で改善させていきます。 長く眼科に通っていても改善せず、進行するばかりだった症状がです。 この様に素晴らしい鍼灸が、なぜ、旧態依然として、医療を担う立場として認められないのかと、それこそ、切歯扼腕しています。
突発性難聴の患者さんがいました。 ご主人が、ひどい坐骨神経痛で長年苦しんだのが、鍼灸治療で完治しました。 しばらくして、その奥さんが突発性難聴になり、薬の副作用にも悩まされ、思うように改善しませんでした。 ご主人が鍼灸治療で治ったのだから、もしかして…、と来院されました。 週1回の治療で、2ヶ月後には、気圧の変化があるとザワザワする感じがあるが、ほとんど正常に近い聴力になりました。(現在も、月に1回、健康維持のために来院しています) その頃、治療中に、「浜崎さんも、鍼治療を知っていれば、今頃は耳が聞こえているのにネ」といわれました。 その時は、何気なく聞いていたのですが、患者さんが帰って、妻と顔を見合わせ、ほとんど同時に「浜崎さんって、歌手の‘浜崎あゆみ’さんのことか!」 突発性難聴に、鍼灸治療が効果がある(ケースバイケースで断言はできませんが…。効果があることもある…でしょうか)と一般に認められていれば、浜崎あゆみさんも、もしかしたら、鍼灸治療を受診して、効果があったのではと思います。 先に、お知らせした7月初旬頃に発売される『鍼灸ジャーナル』誌の松田氏と岐子先生の対談にも(ちょっと私も絡んで、お二人の邪魔をしているような感じですが…)、そのことに触れています。 (是非、ご一読下さい) もちろん、拙い私の治療では、全く手のでない患者さんもいますし、西洋医学ではまったくよくならなかったものが、驚くほどの回復をみる場合もあります。
前述したテレビの内容は、逆に、鍼灸治療は、腰痛に効くかもという期待の裏返しなのかも知れません。整形で治らなかったのが、もしかして鍼灸では…?と考えて鍼灸治療を受診する方も少なくありません。 でも、やはり、鍼灸では効果が薄かった…ということなのでしょう。 「鍼灸治療は、6ヶ月90回治療を受けても良くならなかった…」というコメントは、鍼灸のイメージダウンとなることは確かかと思います。 (ただでさえ、鍼は痛いのでは…というイメージがあり、90回痛い目にあっても治らないのか…などと思われたのでは、たまりません。視聴者が、余り集中してテレビを見ていないことを祈るばかりです))
鍼灸治療は、たった鍼と艾を中心にした治療器具を用いるだけで、婦人科・循環器・消化器等々、非常に広い範囲で大きな効果を表すにもかかわらず、一般にそのことが知られていません。 百花繚乱、多くの異なった治療法があることも、鍼灸が科学にならない一つの理由かも知れません。(色々あるから、それが良いという面もあるのですが…) 一度、鍼灸で効果がない経験をすると、「鍼灸は効かない…」と思われてしまうこともあります。 鍼灸に関しては、‘Aという治療法を行う、○△鍼灸師の治療では治らなかった’という表現が適切なのではと思いますし、また、同じ腰痛でも、それぞれの患者のバックグラウンドが異なりますから、‘〜の既往のある症状の患者は治らなかった’という表現が必要となるのかも知れません。 私の治療では治らなかった患者さんには、「鍼灸が効かないとは、思わないで下さい。村上の治療が適切でなかったから、治らなかったと思って下さい。他の優れた鍼灸師でしたら、直せるかも知れません」と伝えます。 (途中から来なくなった患者さんには、伝えられませんが…)。 鍼灸治療の効果は、個々の鍼灸師の手に委ねられている面が強く、それも、鍼灸がなかなか認められない理由の一つかと思います。
私の講座や、あるいは、講演など招かれて鍼灸の素晴らしさを訴えますが、肝腎の一般の人が知らなければどうにもなりません。 広く、一般の人に鍼灸の効果を知っていただかなければ、「鍼灸の地位向上」もはかない夢となってしまいます。 鍼灸治療を受診し、効果が目に見えて表れて来たときに、患者さんに色々と鍼灸の作用機序やバックグラウンド、鍼灸からの観点などを話すと、患者さんはどうしてそのような素晴らしいことが世に知られないのでしょう…と言われます。 鍼灸からの、本当のアピールが足らないこともあるかと思います。 どうにか、一般の人に知って貰える機会をつくり、‘人寄せパンダ’でもいいですから、パフォーマンスでもして、鍼灸の素晴らしさの一端でも知って貰いたいと思っています。 長野潔先生は、「鍼灸の地位向上」は、優れた症例を積み重ねることが重要と言われました。 お互いが切磋琢磨し、鍼灸の治療効果を高め、症例を検討し、更に、外に向かってアピールすることが必要と思われます。
花を愛でて、怒りを鎮めましょうか
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昔、‘わたしは、泣いています、ベッドの上で…’という歌が流行ったことがあります。 (ちょっと、古いですが…) 患者さんのベッドサイドで治療しながら、私の心境は、‘わたしは、怒っています、ベッドの傍(そば)で…’という状態です。 (治療に集中しなければいけませんが…)
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