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長野式研究会






時々日記
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●時々日記
vol.5 時々日記 … (5)


ジャジャ馬娘:‘むすび’(1)

フィラリアの注射の時期となり、また、過激な行動やオシッコを舐めたりする行為は、前の犬‘ヘイ太’とは随分違うので、獣医さんに連れて行きました。
この獣医さんは、難しい病気や困ったときに頼りにする方が多いことで有名です。
他の獣医さんにかかっていても、治らないときには、この先生の所に来られる方が多いとのことで、私の犬好きの患者さんから、よくお名前を伺っていました。
(私も、こんな鍼灸師になりたいものです)


「私が‘むすび’です」
‘ヘイ太’の失敗に懲りて、‘むすび’は、この獣医さんに診て貰うことに決めました。
血液検査では、全く異常なし。色々な症状や問題は、全て心因性では…との診断でした。
‘むすび’が、私をボスとは見ておらず、ボスの座を争う相手と見ているとのことです。
(つまり、私をなめているということ…)
このままいくと、中途半端な立場からストレスを感じ、心臓に負担をかけ、早死にすることもあると言われました。
また、私には、いつも戦いを挑んでくるだろうとのことでした。

私たちの目の前で、獣医さんは、‘むすび’の首根っこと尻尾の付け根の手前を持って‘むすび’を吊し、診察台の上に横にしたかと思うと、そのまま上から、首絞めと胴締めをするように強い力で押さえつけました。
病院中に、‘むすび’の悲鳴とも聞こえる鳴き声がしばらく響き渡りました。
私の方に助けを求めるような眼を向けていました。

しばらくすると、静かになり、全身の力を抜き、四肢がダラリと下がりました。
獣医さんが、診察台に座らせると、借りてきた猫のように大人しく言うことを聞き、全く別人(いや、別犬)のようです。
先生から、このままでは、手に余ることが多々起こってくることが考えられるので、事故(事件?)が起きる前に、訓練士に付けた方がよいと言われ、訓練士を紹介されました。


「尚古堂の新しい看板娘です」
患者さんは(特に子供は)、早く‘むすび’を見たい(触りたい)と言ってきますが、本人(本犬)は、じゃれていると思っても、爪が鋭く(まだ子供なので細い)、ちょっとした動きでも、すぐに甘咬みをするので、擦り傷や切り傷がすぐにできてしまいます。
(患者さんは、‘ヘイ太’を知っていますので、こんな悪女とは、想像も付かないでしょう)
犬を飼っていて、犬に慣れている患者さんには、‘むすび’を見せますが、とても、他の人には近くに連れて行くことが出来る状態ではありません。
‘ヘイ太’の時には、全くそんなことが無かったので、‘むすび’の異常さが目に付きます。

訓練士を付けようとは思うのですが、獣医さんで聞いたあの悲鳴を、スパルタ訓練で、また耳にするのは…、と考えました。
しかし、これからのことを考えると、やはり訓練をした方がよいとの結論になり、紹介された訓練士さんに連絡を取りました。


訓練士さんが来られました。
犬の訓練と思っていたのですが、犬には、物事の善し悪しを判断することはできず、したことをそのままにしておけば、それはやって良いことと判断し、叱られれば、やってはいけないことと判断するのだそうです。
ですから、基本的には、犬に、やって良いこととしてはいけないことを分からせるように、人間を訓練しなければならないのだそうです。
「エッ…!私の訓練?」。思ってもみませんでした。
それに、訓練は3ヶ月までにしないと手遅れなのだそうです。
‘むすび’は、既に6ヶ月!!遅かった。
今までに学習した悪い習慣を矯正するのが、非常に難しいのだそうです。
人間では、「三つ子の魂百まで」と言いますが、正にこのことでしょう。
3歳までに、甘やかし、何でも言うなりにさせ、我が儘を通した子供は、その性格を直すのは、やはり難しいのでしょう。
脳の奥底に刷り込まれてしまうのでしょう。
訓練は、1回約30分。計12回です。
なるべく、間を空けない方がよいとのことで、基本的に、月・水・金曜日の朝8時から30分ということになりました。

訓練士さんは、私たち夫婦と‘むすび’のケージの前のテーブルに座って、上述したようなお話しを交え、色々と犬の特性などについてお話しを続けます。
‘むすび’は、我々3人の前で、ケージから身を乗り出して、盛んに何か欲しそうにキャンキャン吠えています(「要求吠え」と言うのだそうです)。
こんな時は、無視するのが大切であり、ベストな方法なのだそうです。
このときに物を与えると、吠えれば物がもらえると判断し、以後、「要求吠え」を続けてしまうのだそうです。
訓練士さんが、‘むすび’の「要求吠え」を無視して話し続けていると、‘むすび’も吠えても何ももらえないと諦めて、吠えるのを止め、座り始めました。
その時すかさず、訓練士さんが、‘むすび’に向かって、知らん顔してジャーキーを1片投げました。
‘アレッ?’というような顔をして、‘むすび’は、思わぬご褒美のジャーキーを口にしました。
今度は、「ジャーキーをくれ!」と、再び「要求吠え」が始まりました。
訓練士さんは、また、無視して私たちと話し続けます。
そのうち、また‘むすび’は諦めて、吠えるのを止め、座り始めました。
間髪を入れず、また、訓練士さんからジャーキーが投げられました。
しばらく、この繰り返しです。
どうやら、何度か繰り返されているうちに、‘むすび’も、黙って座っているとジャーキーがもらえると学習したようです。
しかし、今度は、黙って座っていても訓練士さんからジャーキーが投げられません。
少し吠えはしましたが、何でもらえないのだろう…と考えている?様子です。
しばらく無視していると、‘むすび’も疲れたのか、伏せをし始めました。
その時、また、訓練士さんからジャーキーが投げられました。
また、少し経つと、伏せが飽きたのかお座りをし始めます。でも、ジャーキーは貰えません。
そして、また伏せをすると、すぐにジャーキーが投げ込まれます。
何度か繰り返しているうちに、今度は、伏せをすれば、ジャーキーが貰えることを学習しました。
訓練士さんは、訓練らしいこともせずに、伏せを教え込みました。
(もちろん、これが訓練になっているのですが…)

12回の訓練を終了した今では、何も言わずとも、餌を見れば伏せをします。
やはりどの道でも、プロは違います。
初めて我が家に来られた日に、雑談混じりの犬の習性の話しをしている間に、お座りと伏せを教え込んでしまいました。
後から少しずつ教えていただくことになるのですが、基本的に犬の方に褒めて貰うような(エサを与えて良いような)状況を作り出すことが大切なのだそうです。
この場合でしたら、鳴き疲れて座りたくなる状況を自然に作ることになります。


「ヨーグルトはブルガリアに限る」
訓練の様子を見ていると、アメ・アメ・アメ・ムチ、アメ・アメ・アメ・ムチ…、の繰り返しのような感じがします。この忙しいときに、‘むすび’の訓練時間を割き、自らが試験を受けているような状態に、疲れが倍加します。
‘むすび’の成長記を、時々、アップしていきます。
犬好きの方、‘むすび’の成長を見守ってください。

2009/05



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