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長野式研究会




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ネット講座

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所見の取り方、考え方…質問から(1)

Q鍼灸施術後に手足のムクミが出たのは、治療上、足りないもの禁忌なことがあるのでしょうか。
他に原因があるのでしょうか。
もし、肝虚と肝実が同居する場合は、肝虚処置をはじめに充分行い、次に肝実処置に移るべきでしょうか。
また、肝実処置のみで肝虚処置をしなかった場合、何か副作用が出るのでしょうか。

(33歳 女性 職業:テーマパークで写真撮影)
【主    訴】
頚、肩の凝り
【現 病 歴】
1ヶ月まえからメマイが発症。病院で血液検査の結果GOT・GPT値が高いとのこと。メマイの原因は不明と言われる。現在も仕事中にメマイがする(在宅中は起こらない)。地面が揺れる感じ。まっすぐ歩いているつもりでも、周りの人から「歩き方がおかしい」と言われる(メマイの時)。3ヶ月前に職場の配属が変わり、しごとの開始時間が早くなる。その後、肩凝り、頭痛が出る。
【随伴症状】

◆血圧は低め
◆生理痛:婦人科でもらう薬を服用している。市販薬(バファリン)が合わず、吐くことがある。
◆生理不順
◆冬になると起床時に首筋が張る。(キーンという感じ)
◆来院2〜3日前に、腕・足に蕁麻疹が出る。内科で薬をもらう。痒みはない。原因は不明と言われる。

【家 族 歴】
母:下腿のムクミ、子宮筋腫、虫垂炎
【そ の 他】
飲酒はしない。今の職場に変わって1年目、仕事時間が長い。
【既 往 歴】

20歳…虫垂炎(薬で散らす)
21〜22歳…親知らずの抜歯。以降、2〜3年間体長不良
24歳〜…急に視力低下
25歳…虫垂炎(薬で散らす)
当院に来院された理由は、薬漬けの治療に不安を持たれたため。

【治療・経過】

5月26日…試しに鍼灸を受けてみたいとのことで、体験治療のつもりでしたのですが。
(5/25に柔整の保険施術で来院)
(1)「胃の気」三点
(2) オ血処置:「中封」(カマヤミニ+鍼)+「尺沢」
(3) 副腎処置:「照海」「兪府」「尺沢」
(4) 肝実処置:「復溜」「漏谷」「少海」「ゲキ門」
(5) 扁桃処置:「天ユウ」「手三里」「大椎」
(6)「肝兪」:カマヤミニ1壮
5月28日…蕁麻疹が消える
5月29日…手足にムクミが出る(両手・両脚)。
特に朝の起床時がひどい。こわばる。
病院で血液検査⇒リウマチは否定される。痛み止め薬服用。
6月1日…柔整施術


A
〔所見について〕
生理痛や生理不順:下腹部の婦人科ライン、足の「火穴」反応は診られましたか。
虫垂炎を2度も薬で散らしています、また、母親が虫垂炎です
→マックバーネー点、あるいはその周囲、脾経「火穴」の「大都」の反応は診られましたか。
親知らずを抜いています → 顎関節の周囲、鼠径部をチェックしましたか。
抜歯以後体調不良が続いています。恐らく、何か関係があるかと思われます。
季肋部に圧痛が無く、所見がないのに肝実処置を行っています。
GOT・GPTが高いのですから、肝実の反応が出ていると思われます。
蕁麻疹がでましたが、これは肝とオ血に関係があります。
所見の無かった季肋部の2〜3cm上方あるいはそこからやや外方の周囲の肋骨上を、もっと詳しく所見を取るべきです。所見がないのに治療するのは、GOT・GPTが平常なのに肝臓病の薬を投与するようなものです。
24歳から急に視力が低下しています。その前に何かありませんでしたか。
視力は婦人科、あるいは肝と関係があります。
この方は、問診段階でも肝と婦人科に異常があります。上記にありましたが、肝と婦人科を精査すべきです。
「薬漬け」とありますが、どんな薬をどの位服用しているのでしょう。
あるいは、過去にどの様な薬をどの位服用した事があるのでしょう。
蕁麻疹は、△○さん(質問者)が書かれたように薬疹に非常に関係することが多いです。
「薬漬け」が心配というのに、薬に関して余り触れていません。
GOT・GPTの原因が果たして薬なのか、そのところが書かれていません。
背部所見が全くありません。
腹部と背部の所見は、大変関連しています。
「右関門」に圧痛があれば、T11・12は精査しなければなりません。
メマイ、婦人科、肝臓、虫垂、低血圧、蕁麻疹、ムクミ、ストレス、頚の凝りなど、これだけ症状のある患者に、督脉・脊際線(1行線、華陀穴)をはじめとして、背部に所見がほとんどないということは非常に希です。
主訴の「頚の凝り」に対して、所見が全くありません。
どの辺が凝るのか、圧痛はどうか…で相当治療も違ってきます。
職場が変わってのストレスでしたら、「ダン中」左脇・「鳩尾」などの所見を取らなければなりません。
(在宅中に発症しないのでしたら、ストレスも考えられます)
足底にタコがあります。
ただ、所見だけで、何かしなかったのでしょうか。タコは、面白い効果のある時があります。

〔メマイについて〕
メマイにも、多くの種類があります。
低血圧…この方は、低血圧がありますので、一応考えに入れておきます。

主訴が「頚の凝り」であり「頭痛」もあります。
椎骨脳底動脈の不全によることがあります。上記にありますように、頚の所見が重要という理由がここにあります。

肝臓の検査値が悪いので、恐らく、「肝虚」のメマイが考えられますが、それならば、「肝虚」の所見をもっと探すべきです。「肝実」を治療しただけで、「肝虚」の治療はしていません。
まだ、他にもありますが、既往歴や所見にあてはまるものがありませんので、関係があるのはこの位かと思われます。


〔ムクミについて〕
上記のように、問診や所見が非常に少ないので、何とも言えませんが、

肝実処置と肝虚処置ですが、肝実と肝虚が同居している場合には、肝虚は肝実の圧痛に隠れてしまい、所見として出てきません。
先に肝実処置を行って、肝実の所見が減弱した後から肝虚の鈍痛あるいは擦診痛が表れてきます。
同居している場合には、肝実処置を先にやらざるを得ません。

‘基礎講座’でしつこいほど「病は上がる」とお話しした事を覚えておられるでしょうか。
肝の前に、肝より下の所見、特に、婦人科、虫垂炎、オ血、副腎などの所見をよく取り、先にそれらを治療し改善させるべきです。
この方の場合、ムクミは、婦人科からの可能性もあります。生理前にムクミの発症する人もいます。
母親が下腿のムクミがあります。
虫垂炎、下腿のムクミ、子宮筋腫(婦人科)と、母親の家族歴を全てこの方は持っています。
家族歴に関係があるかも知れません。
また、母親の既往歴をもっと聞いた方がよいかも知れません。
このムクミが肝実処置に関係があるかどうかは判断出来ません。
下腿のムクミですから、家族歴に心臓病の既往歴を持った方がおられるか詳しく聞くべきです。
また、心臓の所見をよく取るべきです。
心が弱っている時に、その母(肝)を補わないで瀉した(肝実処置)だけですから、心に負担がかかったとも考えられます。

質問者からのFaxから考えられる事をざっと述べましたが、上記以外にも所見が分かれば更に書き加えたい事が多々あります。鍼灸師は、MRIやX線などの規模の大きい検査器具を使いませんので、詳しく問診をしたり所見を取る事が大変重要です。問診や切診に関しての所見が少なく、はっきりと答える事ができません。

お会いして言葉で説明すれば10〜20分程で済む事でも、文書にすると何時間もかかってしまい、膨大な量になってしまいます。文書や電話などでの顔の見えない質疑応答は、非常に難しいものがあり、また、人の命にかかわることもありますので、迂闊にお答え出来ないことがあります。この様な質問に直接お答え出来るような講座ができればと思っています。

これから鍼灸師や柔整師が非常に多くなり、整形外科との競合から我々も相当頑張らなくては生き残れない厳しい状況です。通常ならば西洋医学に行ってしまいそうなメマイのような症状でも、我々、鍼灸師の方が優れている事を知らない患者さんがほとんどです。こんな時にこそ、鍼灸の素晴らしさをアピールする絶好のチャンスです。
それには、何しろ学びつつ臨床する以外に道はありません。是非、頑張って頂きたいと思います。

【補 足】
質問をする際のポイントがご理解出来ましたでしょうか。
質問される方はストレートに質問されますが、そう簡単には質問に答えられないことが、あるいは、質問に答える私の悩みも、お分かり頂けますでしょうか。まだまだ書き残したことは沢山あります。
また、私が、質問者に所見をチェックしたか否かを尋ねていますが、多くの場合には、その所見に対して処置法が考えられます。しかも、多くの所見から、共通のバックグラウンドが浮かび上がってくることが多いです。

これから、皆様からのご質問にお答えしていきたいと思いますが、まず、問診や所見などのポイントを押さえた質問方法でお願い致します。
また、「…処置をしました」と書かれている質問がありますが、
(1) その処置をした理由…どこをターゲットにしましたか?
(2)

その処置をした結果、変化した(改善した)所見
…1処置で1部位(1つの所見)だけでなく、他にどこが変化したかも調べます。数ヶ所が変化したときには、それらに何らかの関係があり、治療(あるいはバックグラウンド)のヒントになることが少なくありません。
「ネット基礎講座」の「基礎講座を生かそう…ラインで診る」を参考にして下さい。




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