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情報コーナー

●長野式研究会・尚古堂便り
Vol.9 興味鍼々…(2)  尚古堂での症例:《1》

◆尚古堂での治療で興味ある症例がありましたので、
 ご報告します。


1歳9ヶ月、男児。

【主訴】
全頭型の円形脱毛症
【現病歴】
生後1年3ヶ月余に発症。
その後、大学病院で、全頭型の円形脱毛症とのことで、治療。3ヶ月で全頭部が脱毛。
患部へのステロイドの塗布が続くにも拘わらず、脱毛が続き、大学病院でも、再び生えてくるとハッキリした保証はなかったので、ステロイドの塗布は中止している。
【その他】
出産後、母親の体調が思わしなく入退院を繰り返したので、本人は、妻の実家や父親の姉の家で面倒をみて貰う。
生後、1年余に新居を建て、久しぶりに家族がそろって暮らし始める。その2ヶ月後より脱毛が始まる。家族一緒に暮らし始めたときには、母親から、執拗に離れない様子がうかがえた。
発症前に、風邪をひいている。
母親が膠原病に罹患。2歳上の姉がいるが、長女の出産後、本人を妊娠中に強皮症が悪化する。
【治療方針】
◎長野潔先生は、小児鍼は、前腕の大腸経と背部膀胱経に、経絡の流注に沿って歯車鍼をされた。歯車鍼は、行ったところが、やや赤味を帯びるまで行った。
小児鍼と言えば、「身柱」「命門」。
全頭型の円形脱毛症は、自己免疫疾患と言われているが、母親が膠原病(自己免疫疾患)に罹患しているので、扁桃処置…「天ユウ」「曲池」
また、長野先生は、リウマチ疾患に対して、「数脉」の場合は「関元」を使用された。
リウマチ疾患は、自己免疫疾患なので、「関元」は、広く捉えて自己免疫疾患に効果があるのでは…、と考えて、岐子先生は、自己免疫疾患にも使用される。
妊娠中の母親の体質の影響と考え、妊娠の異常は「膏肓」
頭部全体に、小児鍼の長刀鍼で擦過。
  ◎=主に「長野式治療法」 ◆=主に「キー子スタイル」
  ◇=「長野式治療法」と「キー子スタイル」の混合治療(考え方も含む)
  ●=一般に使用されていると思われる治療
【治療・経過】
[初診]マツゲ、眉毛に少し毛がある。前頭部のごく一部分に、ほんの少し毛が残っている程度で、他に頭部には産毛も生えていない。

男児が泣き叫んで治療をさせないので、マジックでマークをして、父親に以下のことをするように依頼した。
小児の治療は、無理強いをすると、後々、よりやり難くなるので、1〜2回は、小児の思うようにさせている。
・「命門」「身柱」、両側の「膏肓」 … 長生灸のライト(温灸)。
赤味を帯びないときには2回。途中、熱がったら、その時点ではずす。
・「天ユウ」 … 寝てからパイオネックス(セイリンの円皮鍼)を貼付し、爪で数回叩く。
・「曲池」 … 爪楊枝を輪ゴムで10本位束ね、集毛鍼のようにして、少し赤味が帯びるまで軽く突つく。
家では、リラックスできるし、信頼している父親の行うことだったら安心して言うこと聞くので、無理にではなく行ってもらうように指導した。
起きたら取り去る。

[第2回:7日後]少し、前頭部にあった少しの産毛が、少し広い範囲で生えてくる。
父親は、たった一度の治療でほんの少しでも生えてきたので、非常に喜んでいたが、私の方が、こんなに早く効果が出たので驚いたほど。
これから、少しずつ治療に慣れて、もう少し経ったら本格的に…と思っていた。
3歳の姉も一緒に来ていたので、歯車鍼や温灸、集毛鍼など、先に姉にデモンストレーションを行い、姉に少しも痛くないことを話して貰いながら、これ以外には、何もしないと納得させて、少しずつ本人にも行った。
*歯車鍼  *「身柱」「命門」「膏肓」に温灸  *「曲池」に温灸
*頭部全体に長刀鍼 を主として行った。
ようやく少しやらせるようになったので、無理のない範囲で行った。

[第3回:10日後]マツゲが少し黒ずんでくる。
[第4回:7日後]産毛が少し黒ずんでくる。
[第5回:7日後]産毛が全体に生えてくる。
[第6回:13日後]全体に生えてきた産毛が伸び、ツムジが分かるようになる。
[第7回:22日後]更に毛が伸び、ツムジがハッキリとしてくる。「関元」を加える。

「関元」は、集毛鍼で、少し赤味を帯びるまで行い、温灸を加える。
[第8回:35日後]全体に毛の量が増え、逆に、一部に脱毛があるような感じになってくる。

以後、[第9回:14日後]、[第10回:28日後]、[第11回:20日後]と治療。


写真は、第11回目の治療のときのもの

故長野潔先生は、小児に対しては、2分以内で治療を終わらせなさいと言われました。
小児は、それだけ免疫力が強く、感受性も鋭いので、2分以内で効果が上がるのかと思われますが、この男児の場合は、母親が妊娠中に自己免疫疾に罹患していて、胎内からの影響が非常に強いと思われ、より免疫力のアップを図るために、少し時間が長くなってしました。それに、色々と注意をそらせながら治療するために、20〜30分かかってしまいます。

この男児の場合、バックグラウンドは、やはり、免疫疾患ということかと推測します。
全頭型の円形脱毛症であり、外見に現れて人の目にさらされるという精神的には辛いことがありますが、逆に、これが他の難病といわれるような自己免疫疾患に罹患したら、もっと辛かったのではと思います。

父親がいつも連れてきますが、外出すると、子供よりも父親の方が、人の目が気になると言われ、物心が付いて、幼稚園や小学校にあがると、いじめに遭うことも予想されます。

改善が目に見えてきているので、歯車鍼、長刀鍼、パイオネックス、温灸などを購入されて、父親が大変熱心に自宅で治療して下さり、今では、2〜3週間に一度の治療になっています。

初診時の写真があれば比較して頂けたのですが、やはり、最初のうちに写真を撮らせて欲しいと頼むのは、気が引けました。
全体に毛が生えてきたので、写真を撮ることを願い出ましたら、子供が全頭型の脱毛症で悩まれている親が大勢おられ、「親の会」のようなものもあるそうです。
是非、悩んでいる皆さんのためにも公開して下さい…、との快諾を頂きました。


小児に対しての治療は、よく知られている小児鍼と、他は、通常の成人と同じ考えで行っています。
ただ、手技を、パイオネックス、集毛鍼、温灸、テルミー、などにしています。

最近、会員の方から、ご自身のお子さんの治療の相談を受けました。
基本的には、このような治療をしていますが、その子の症状や既往歴により、色々と変化球を考えて治療されれば宜しいのではと思います。
ご参考になれば有り難いです。

また、小児の良い症例がございましたら、ご報告下さい。お待ちしています。
色々な症例を、皆さんと共有出来れば、「鍼灸の地位向上」になるのではと思います。


【治療方針】に書きましたが、私の治療は、「長野式治療法」と「キー子スタイル」の混合治療(=wkey治療)を行っています。

この男児も、治らずに、ステロイド剤の塗布が続いていれば、様々な副作用が発症してくる恐れがありますが、鍼灸で、ここまで治ってきます。

鍼灸って、凄い!!!
「長野式治療法」・「キー子スタイル」って、素晴らしい!!!
ますます、興味鍼々ですネ!!!

そう思いませんか。



村上 裕彦 2008年3月




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